| 洛タイ投書箱 |
| 宇治市民の誇り―セルキリーニ・マミコさんへ | ||
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◆…毎回、興味深く拝読しています。 ◆…わたしは俳句についてずぶのしろうとで、ある会の月刊会報の作品を鑑賞することを通して、次々に未知の日本語と遭遇して、日本語の豊かさ・奥深さ・難しさを知る喜びを味わっています。 ◆…それぞれの民族が持つ言語は、それぞれ固有の文化でもありますから、民族の誇りとしなければなりませんね。そして他民族の言語を互いに尊重しなければなりませんね。表意文字の漢字から新たに表音文字のひらがなとカタカナを創案し、さらにはローマ字表記まで可能にしてきた民族の知恵は世界でも珍しいですね。ご指摘のように、カタカナ英語の氾濫にはわたしも眉をひそめますけれど。 ◆…アジア太平洋戦争中のことですが、沖縄の小学校で琉球語の使用を禁じ、それを口にした子に罰として方言札を吊るさせたといいます。本土人の官憲や軍は標準(共通)語で沖縄県民を統制し監視したかったのですね。 ◆…かつて朝鮮半島を植民地として統治したころ、朝鮮民族に日本語の使用を強要し神社参拝を押しつけ、名前まで日本人流に創氏改名を強制しました。朝鮮人の心の髄まで皇国の臣民化しようとしたわけです。言語を根絶やしにすることは、その民族の精神、歴史的に築いてきた文化を否定し抹殺することに他なりませんね。支配者の言語が被抑圧者の言語を駆逐する、こういう惨禍は許せません。 ◆…もしかしてすでにご存じかもしれませんが、ぜひお伝えしたいことがあります。朝鮮人尹東柱(ユン・ドンジュ)は一九一七年に生まれ、四二年「平沼東柱」という名で来日、立教大学を経て同志社大学に留学していましたが、四三年七月一四日、下鴨警察署に逮捕・起訴され、懲役二年の刑を受け福岡刑務所へ送致され、四五年二月一六日に獄死。二七歳でした。治安維持法違反容疑でした。朝鮮語(ハングル)で詩を書いていたことが、朝鮮独立の志の証とされたのです。心奥の情念や思念をことばに刻むとすれば、それは彼にとって異民族語の日本語ではなく、母語である朝鮮語以外にありえたでしょうか。 ◆…その彼が、同志社大学の学友数人と宇治川の天ヶ瀬吊り橋を訪ねていたのです。生前最後の写真として遺されていました。ソウルの延世(ヨンセ)大学と同志社大学今出川キャンパスに彼の詩碑が建立され、最近になって彼が下宿していた辺りの京都造形芸術大学の一隅にも碑が建立されました。去年九月一一日、天ヶ瀬吊り橋の畔にも「記憶と和解」の記念碑を建立しようと委員会が結成されました。わたしも共同呼びかけ人代表の一人です。 ◆…二〇〇四年一一月、国連総会は「第二次世界大戦終結六〇周年を記念する決議」を全会一致で採択し、五月八日と九日を第二次世界大戦終結の「記憶と和解の日」にすると宣言しました。記憶し謝罪し償うことがないかぎり、被害者から赦されることはないでしょうし、加害者と被害者の和解は創出できないのではないでしょうか。八月一五日、小泉首相は靖国神社に総理大臣として参拝しました。一番の問題は、この神社が「忠君愛国」「尽忠報国」の精神的支柱だったし、いまなお15年戦争を自衛のため大東亜共栄圏建設のための聖戦であったと主張する宗教施設であることです。 ◆…一九二五に制定された治安維持法は、帝国主義的侵略戦争体制に反対する政治運動はもちろん文化・宗教運動までを取り締まるのが目的でした。二八年改正では最高刑罰を死刑にするものでした。これに議会で唯一人反対を貫いたがために花やしきの山本宣治代議士は暗殺されました。この治安維持法による弾圧の犠牲者は家族も含めたら数十万人に達しました。小泉首相は靖国参拝で「戦争で犠牲になった方々に感謝と敬意を表した」と言います。しかし、祀られているのは「皇軍」の軍人・軍属だけ。焼夷弾空襲や原爆で殺された庶民やアジアの二千万の犠牲者への心からの謝罪のことばも償いの表明もない。山宣や尹東柱など治安維持法で殺害した人たち、拉致し労働を強制した朝鮮・中国の人たち、従軍させ性奴隷として酷使した女性たち、原爆症で六一年ものあいだ痛みと不安にさいなまれる数十万の人々に一切償いをしていない政府。わたしは、こういう政府が恥かしいのです。憤りを覚えます。国策としての軍用機生産に従事させられた朝鮮人とその家族がずっと居住してきた土地が民間会社の所有地であることから、裁判で立ち退きを迫られている伊勢田ウトロの問題に、宇治市も京都府も傍観者然でいます。戦争責任を果たさずにおいて、戦争指導者も合祀される神社には「心の問題」として平然と参拝するのですから、彼の知性・感性・想像力の貧弱と良心の涸渇を思わずにはおれません。 ◆…宇治市民としてわたしは、暗殺された三月五日の墓前祭に、反戦平和・人権擁護の人山宣を顕彰してその遺志を継ぐ誓いを新たにしてきたことを誇りに思います。尹東柱やウトロの人々に思いを寄せることの大切さを自覚します。 ◆…あなたが「『世界で唯一の被爆国の、世界で唯一の平和憲法』の精神を世界に発信すること」の大切さを訴えておられることが、とても嬉しく、初めてお便りしました。(宇治市広野町・須田稔) |
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