検証 六地蔵ものがたり B
イトーヨーカ堂が出店計画発表
宇治ショップセンター協同組合

組合員の一部が実質上の権利譲渡

開発業者から4千万円から6千万円



 六地蔵問題、宇治ショップセンター協同組合をめぐる問題はバブル時代の象徴的な事だった。組合員自身が「今から思うと出来事は一冊の本になるのではないか」という。それだけ個人にとってもセンターにとっても、地域にとってもさまざまな影響、爪痕、傷跡を残した。商売、事業が絡んでいる以上、経営者が金儲けをしようというのは悪ではない。悪く言えば「抜け駆け」「裏切り」があったが、単純に責め立てるのも難しい。ただ、個人的な、感傷的なものに過ぎないかもしれないが、組合解散・売却に反対してきた組合員は「地域の中で、あるいは家族や友人たちに胸張って生きていけるような生き様が望ましいのではないか」という

 潟Cトーヨーカ堂がヴェールを脱いだのは1990年(平成2年)7月末のことだった。7月30日付で出店表明が近畿通産局に受理され、翌日の31日に当時の同社店舗開発室大阪事務所の所長が会見、出店計画概要を説明した。当時、地元が反対すれば実質上、出店できないという状況から大幅に大店法が運用緩和される初めてのケースでもあった。

 同社店舗開発室大阪事務所関係者は記者会見で公式、非公式に地元と話し合ってきた経過があることを「正式に」認め、「宇治ショップとは50回以上も話し合ってきた。しかし、結果として総意が得られず、現況としてはアドバイスもできない。計画が明らかになった段階で話し合いを進めたい。共同開発などの意向があれば前向きに検討したい」と共同開発に可能性が残されていることを説明したが、一方では組合員一部に対して強力な働きかけをしていた開発業者N社=鞄都グループ=については「N社と仮に契約してもらってもその約束を守らなければならないということにはならない」と、N社との関係を否定。

 関係が否定されながらも驚くことに南都グループの強力な働きかけに応じ、宇治ショップセンター組合員たちは実質上、組合員権利をN社に譲渡。理事会が機能できない状況に陥り、組合員総会も開催できない状況になり、売却を反対する組合員が権利譲渡の違法性を訴え、仮差し止め訴訟で対抗していることが間もなく明るみに出た。
 当時、売却に反対していた組合員たちが原告となり、理事長・理事をはじめ開発業者N社経営者とその影響下にある関係者を相手取って起こした「平成3年(ワ)第一七一四号組合員たる地位不存在確認等請求事件」判決文によると、詳しい経過が良くわかる。

 宇治ショップセンターが建設、開業したのは昭和42年(1967年)。その後、センターの商人が中小企業等協同組合法に基づき、2年後の1969年10月に協同組合を設立。さらに1974年にはオーナーから土地・建物を買い受けている。ところが、1986年6月5日未明の放火と見られる火災で宇治ショップセンターは全焼。同年11月には「仮店舗」という形で再出発したが、仮店舗営業には23人が入店していない。

 火災後の再建時に開発業者の動きがあったためか、86年9月の総会でいったんは「組合員がほかに持分を譲渡することを禁止する決議」をしているが、90年(平成2年)4月に組合総会でこの決議を翻し、「持分譲渡禁止決議を解除する決議」を行い、事実上、組合員権利の譲渡に道を開いた。

 後の裁判でも明らかになるが、「組合員権利持分譲渡禁止決議を解除する決議」の1年前に実質上、権利を譲渡する契約書を地元開発業者南都グループとの間で交わしている。代金は一般組合員のほとんどは4千万円。理事などの立場にあった組合員は何と5割増の6千万円で契約している。

 当然のように宇治ショップセンターは組合員が二分され、1991年(平成3年)5月には権利譲渡の無効を訴え、裁判手続き。組合員総会も開催できない事態になってしまう。公平にリードすべき理事が「役得」し、背任・背信だ――という指摘や不満、怒りの声が交錯していた。

 そんな地元商業関係者の動き、対立をよそに北の玄関口にふさわしく1992年(平成4年)10月22日に六地蔵地域発展の起爆剤ともなるはずのJR奈良線・六地蔵駅が開業。当時、知事だった荒巻禎一氏は「六地蔵駅の開業は京都市、宇治市、沿線市町発展の核になるものと期待」とあいさつ。関係者5百人が開業を祝福した。

 判決文によると、裁判ではY氏らは被告となったS氏らに組合の持分を譲渡。宇治ショップセンターの本店舗が開設されたときには必ず入店することを約束し、入店しない場合は組合から除名されても異議を述べないという誓約書も提出。単に南都グループに名義貸ししたのではない、と持分譲渡の正当性を主張したのに対して訴えた原告側は南都グループは各組合員から地位を買い取るために画策、同社の従業員や取締役の名前を使っており、実質は南都グループが権利入手しており、権利譲渡は無効だ、と訴えていた。判決主文は原告側の訴えを認め、組合員権利譲渡の無効が確定した。ところが、この判決で一件落着かとはいかなかった。巨額な譲渡費用を投資した南都グループからすれば金も労力も使った挙句、得たものがないことになる。どうなったのか…。(つづく)

 
 

<<BACK 目 次 NEXT>>

copyright©洛南タイムス社
京都府宇治市宇治壱番26
TEL 0774-22-4109 FAX 0774-20-1417

※このサイトに掲載する記事や写真、その他のデータの著作権は、洛南タイムス社
またはその情報提供者に属します。無断転載を禁止します。